三笠の記事    2000年3月30日 朝日新聞朝刊

 

折々のうた

大岡 信

 
    何度拭いてもおんなじ鏡

      曇りはこっちの胸にある

                            尾藤 三笠

 
 

 『どどいつ万葉集』(平4)所収。明治三十八年神田生まれ、昭和三十年没。大正後半期から川柳作家として活躍。戦中から戦後にかけては、川柳人の結集に尽力し、かたわら、自宅で連句の研究会を開くなどして、古典にも親しんだ。子息が、『川柳総合事典』を編むなどの仕事をなしとげた尾藤三柳。右のどどいつは、川柳家らしい目のつけどころが光る作だ。人間心理の機微を押さえている。

 

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