震災と川柳 しんさい と せんりゅう                    朱雀洞文庫利用規定

 「津浪の町の揃う命日」という古い句が残っている。
 旅先で見た墓標に並んだ同じ命日の訳を訪ねれば、かつて、この地を襲った津波のことを淡々と語る古老。旅人は、その地の悲話に触れ、感慨を深くするといった旅情の一コマ。
 しかし、ひとたび東北沿岸を襲う津波のニュース映像を見た後は、この句の奥に描かれた阿鼻叫喚が自分のことのようにイメージと重なる。
 鑑賞とは、あくまで読者の経験領域を出ない。
 東日本大震災という現実を目の当たりにした私どもにとって、古句の表現する内容まで変わってしまった部分がある。
 少しばかり、地震の川柳を振り返ってみたい。

江戸の地震の句      鯰の外はゆるがせぬ君が御代 誹風柳多留 123別篇
関東大震災の句     其の後の火の手は人を焼く烟   井上剣花坊
阪神大震災の句              平成七年一月十七日 裂ける   時実 新子
東日本大震災の句  霊長の尊厳奪い取るマグマ     尾藤 三柳
関東大震災の写真史料〔朱雀洞文庫〕

関東大震災の新聞史料〔朱雀洞文庫〕

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