「津浪の町の揃う命日」という古い句が残っている。
旅先で見た墓標に並んだ同じ命日の訳を訪ねれば、かつて、この地を襲った津波のことを淡々と語る古老。旅人は、その地の悲話に触れ、感慨を深くするといった旅情の一コマ。
しかし、ひとたび東北沿岸を襲う津波のニュース映像を見た後は、この句の奥に描かれた阿鼻叫喚が自分のことのようにイメージと重なる。
鑑賞とは、あくまで読者の経験領域を出ない。
東日本大震災という現実を目の当たりにした私どもにとって、古句の表現する内容まで変わってしまった部分がある。
少しばかり、地震の川柳を振り返ってみたい。 |