鯰の外はゆるがせぬ君が御代 『誹風柳多留』123別篇
「君が御世」とは、徳川の世のこと。天下泰平であるべき徳川の治世では、「鯰」=「地震」以外に「ゆらぐ」ことはないという体制べったりの趣向の句。実際にこの句が生れた天保3年頃には、さまざまな内憂外患が起こりはじめていた。川柳は、天保の改革に際して自らの表現の自由を縛る「柳風式法」を整えることにより生き延びることを図った。
白浪は黄金 津波は家を取り
『誹風柳多留』81篇
「白浪」は、歌舞伎の「白波五人男」からも判るように盗賊のこと。当然「黄金」を盗るのが稼業。それに対し、同じ波でも「津波」は「家を取る」という対比仕立ての狂句。江戸時代の句の多くは、今日の「時事川柳」のように目の前に生起する事象を読むのではなく、課題に対して面白い趣向の作品を作る事が中心であった。 |